教育プログラム
看護部教育体制
当院の看護部教育体制についてご紹介します。
看護師等の人材確保の促進に関する法律において看護師等の責務が謳われています。当院の組織理念をもとに看護部の理念があり、それに基づいて看護職員の教育を行っています。看護部として職員一人一人がそれぞれの生活と、専門職としてのキャリア形成がバランスよく構築できるよう支援しています。キャリアラダーにおける院内教育と新人看護職員研修についてご紹介します。
そのほかにも、医療安全や感染管理など全職員を対象とした教育を実施しています。業務に必要とされる研修はすべて勤務時間内に行っています。
またe-ラーニングシステムを導入しており、自己研鑽や必須研修に活用しています。
下記の院外研修参加への支援も行っています
- 認定看護師教育課程
- 特定行為研修
- 臨地実習指導者講習会
- 新人看護職員研修における教育担当者研修 責任者研修
- 看護管理者研修 ファースト・セカンド・サード研修
- 重症度、医療・看護必要度 評価者及び院内指導者研修
など
キャリアラダーにおける院内教育
当院では、2016年日本看護協会が公表した「看護師のクリニカルラダー」(以下JNAラダー)の4つの看護実践能力(ニーズをとらえる力・ケアする力・協働する力・意思決定を支える力)に、当院独自の倫理観、組織的役割遂行能力、教育・指導・研究を加えたキャリアラダーを作成し、活用しています。それぞれのキャリアラダーの到達目標は、キャリアラダー表をご覧ください。看護職員一人ひとりが、自分のキャリアをどう描いていくかを組織として支援しています。
【レベルⅠ】
対象は新人看護職員、2年次看護職員です。
新人看護職員は、臨床研修制度に則りOJTと集合研修を組み合わせて行っています(詳細は新人看護職員研修のページをご覧ください)。
- 2年次は、プリセプター制度を取り入れています。部署のチェックリストに基づいて、看護実践能力を修得していきます。レベルⅠの大きな目標はケーススタディのまとめ、発表です。自分の興味のある分野の看護や印象に残った患者のケースをまとめます。患者のニーズをとらえ、どのようにケアするか、またチームスタッフや他職種と協働し、対象者の意思決定を支えるなど、すべての看護実践能力を総動員します。
- まだまだ先輩方の支援が必要な時期でもあります。チームメンバーとしてフォロワーシップを学び、必要なときに助けを求め、自分の仕事をやり遂げることが求められます。
- 新人看護職員が入職して初めて自分自身が先輩となります。新人看護職員を経て新人看護職員のことを一番理解している先輩看護職員として、後輩に声をかけ、身近なモデルとなっています。
【レベルⅡ】
対象は3~5年目看護職員です。
- 各研修を受け課題を達成し、5年次に事例研究をまとめることが最終目標です。日々の看護実践で関心のあることや疑問に思っていること、心に残った患者への看護の振り返りなどにより、看護実践能力の向上を目指します。事例研究では研究の手法を取り入れることで、レベルⅢの看護研究につなげます。
【レベルⅢ】
対象は、事例研究を終えた看護職員です。
- 自立して看護実践能力の向上に努めることが求められます。自分で具体的な計画を立案し12月の課題提出に向けて取り組みます。例えば、e-ラーニングを視聴して実践に活かす、新人教育における実地指導者として取り組む、看護研究に取り組むなどです。看護実践能力の向上、組織的役割遂行、倫理観、看護研究などの課題を達成することで、レベルⅣにステップアップします。
【レベルⅣ】
対象は、レベルⅢの課題を達成し看護研究を終えた看護職員です。
- より専門職としての看護実践能力が求められます。各分野での専門的な看護実践能力の向上や、リーダーとしての役割遂行、研修会を企画し実施することなどを課題とします。
3つのコースに分かれて、目標を達成します。
雪コース:看護実践のモデルとして、自身の看護を多角的・客観的に評価できることを目指す
月コース:看護実践の役割モデルを果たしながら、よりよいケア提供ができる環境の調整を目指す
花コース:スタッフへの指導を通して、後輩育成力の向上を目指す
【レベルⅤ】
只今、検討中です。
その他、新人研修で実地指導者を担う者や、臨地実習指導を担う者へはそれぞれの委員会主催の研修会を受講していただきます。
【主任看護師・副看護師長・看護師長・看護副部長・看護部長】
個人課題と部署課題に取り組みます。
- 個人課題は、それぞれの職位に応じた部署内での役割、院内での役割を鑑み、自分の課題を明確にして取り組みます。
- 部署課題では、部署の課題をSWOT CROSS分析によって組織分析し、1年の目標を立案します。計画を実践し、1月には部署ごとに成果を発表します。それぞれの部署が抱える課題や取り組みを共有し、院内全体でよりよい組織になるよう毎年取り組んでいます。
今後JNAのマネジメントラダーへ移行していく準備をしています。
*まだまだ教育体制には不十分なところがあります。毎年少しずつ改善しています。
【経験のある採用者の方への教育】
- 前勤務場所の教育体制や受講状況を確認し、当院のキャリアラダーレベル別教育に取り組みます。
【看護補助者研修】
- 日ごろの業務に活用できるエッセンスを看護補助者に伝えます。講義のみならず、短い時間ですが演習を用いて、実践に近いかたちを取り入れています。
- 看護職員を対象とした、看護補助者を理解する研修会も毎年行っています。
新人看護職員研修
当院では、国家試験に合格し初めて臨床に出た看護職員に対して、厚生労働省の新人看護職員研修ガイドラインに則り、集合研修とOJT(on the job training)を組み合わせた臨床研修を行っています。1年間で院内をローテーションし、さまざまな経験と多くの先輩から支援を得て、専門職業人・社会人として成長していきます。助産師として採用された方も、同じプログラムです。
年間を通して新人看護職員研修責任者の教育専任師長が支援します。定期的に面談を行ったり(4月・6月・10月・翌3月)、各部署へラウンドしたりして新人看護職員のようすを理解します。状況に応じて各部署の所属長や教育担当者と連携し、解決策を講じます。
集合研修
基礎教育で学んだことをベースに、集合研修で学びを深めます。講師は当院の専門看護師や認定看護師などその分野でのスペシャリスト、他職種(薬剤師、臨床検査技師、臨床工学技士など)が務めています。講義のみならず、演習やグループワークを通してより臨床に活用できるように工夫しています。この集合研修には、能登地区の新人看護職員が参加することもあります。施設を超えて学びを共有します。6ヵ月、12ヵ月フォローアップ研修では、自分の経験を振り返り課題を明確にします。
令5年度の集合研修をご紹介します
月 | 集合研修 | |
4月 | 臨床研修制度とは 社会人基礎力・接遇 医療安全 感染管理 薬剤の取り扱い:薬剤師 安全な移動・移送:理学療法士 検体の取り扱い:臨床検査技師 注射・点滴 医療機器の取り扱い:臨床工学技士 |
褥瘡対策 電子カルテ 入院時アセスメント 栄養管理 摂食嚥下障害患者の看護 排泄管理 呼吸器看護 循環器看護 脳神経系看護 |
5月 | 救急看護 | 周術期看護 |
6月 | 高齢者ヘルスアセスメント 2年目看護師との意見交換会 |
認知症患者の看護 |
7月 | 精神看護 | がん看護・看取りの看護 |
8月 | 訪問看護 | 小児看護 |
9月 | 医療事故検討 | 災害看護 |
10月 | 6ヵ月フォローアップ研修 フィジカルアセスメント | |
11月 | 化学療法を受ける患者の看護:薬剤師 | |
12月 | 感染管理Ⅱ | |
3月 | 感染管理Ⅲ 12ヵ月フォローアップ研修 |
OJT
院内をローテーションし、各部署での看護を学びます。ローテーションは、研修生の希望を考慮しています。令和5年度は以下の計画で実施しています。11月に教育専任師長と面談を行い、12月からの部署を決定する予定です。
今まで興味があまりなかった分野でも、実際の看護にふれると魅力を感じます。長い看護職員人生の短い1年ですが、研修生たちのキャリア形成の礎となる大事な時期です。
初期研修:病棟①(4~7月)
各部署でほぼ同じ内容が経験できるように教育担当者や実地指導者が中心となって新人看護職員を支援します。看護職員としての業務のみならず、社会人として必要な姿勢を修得することも目標にしています。5月から休日勤務、6月には先輩看護師と夜勤を経験し、7月に夜勤を行うことを目標にしています。新人看護職員の修得状況を相談しながら、計画します。また病棟に関連した外来へ半日研修に行き、入院前の看護を学びます。
病棟②(8月~11月)
一般病棟や地域包括ケア病棟で看護を学びます。
2つめの病棟研修中に、以下の4つの部門を6週間ローテーション研修します。
- 精神センター:1週間
- 訪問看護ステーション:1週間
- 手術室:1週間
- 救命救急センター:3週間 救命救急センター・HCU病棟・救急外来・透析部・内視鏡部・放射線部
12月より部署配置とし、基本的な看護実践能力の修得と部署における看護を学びます。
新人看護職員は、看護学生から看護職員(保健師・助産師・看護師)になるという職業社会化、社会人になり組織に属するという組織社会化がすすむ、激動の1年間となります。新人看護職員はどの施設に属しても、同じような経験をします。それを「つらい」と思わせるか、「大変だけど頑張れそう」と思わせるかは組織の支援が関連していると考えています。
当院では2010年から新人看護職員研修を実施しており、最近では2020年からのコロナ禍で基礎教育での臨地実習が今までと同じように受けられなかった新人看護職員を受け入れています。臨床に出ることが心配な看護学生さんもたくさんいるでしょう。当院では基礎教育で十分経験できなかったことをローテーション研修で補い、看護職員として成長できるよう全職員で新人看護職員を支援します。